朝日新聞に連載されていた4コマ漫画「となりの山田くん」を「となりのトトロ」「も
ののけ姫」のスタジオジブリが「おもひでぽろぽろ」の高畑勲監督で映画化した作品
あの大ヒット作「もののけ姫」の公開から2年後の1999年に製作されたのがこの
「ホーホケキョ となりの山田くん」です。
高畑勲監督としては前作の「平成狸合戦ぽんぽこ」から5年後の監督作品となりまし
た。いしいひさいちの4コマ漫画を原作にしたこの映画は、ジブリとして初めてセル
画を使わないデジタル制作で作られた記念すべき作品でもあります。
しかし、完成した作品はデジタルの逆を行く手描きの水彩画のような映像に仕上がっ
ているのに驚きますが、この映像表現をする為に通常の3倍の作画数という恐ろしい
手間が掛かり、最終的に17万枚という作画の枚数はジブリ作品の中でも「かぐや姫
の物語」が製作されるまで最高だったというから驚きです。
ただ実際映画を観ても、これにそんな手間が?と思ってしまうのが悲しいところです
日本のどこにでも居るであろう家族の日常風景をスケッチするように、映画は短いエ
ピソードが淡々と綴られていきます。原作が4コマ漫画という事もあってか物語中心
となる核はなく、あえて家族そのものの何気ない日常が積み重ねられていく映画
特別大きな事件も出来事もない家族のゆるい生活の中にあるささやかな幸せや喜び、
笑いがいかに大切なものかが緩やかに描かれていくのですが、物語の推進力が無い
短いエピソードの繰り返しを映画として104分の観ていると、少しばかり退屈に感
じてしまうのも正直なところですが、それはそれで楽しかったりするのです(笑)
この映画で一番印象深いシーンに、学校の先生が生徒に向かって「適当」という言葉
を推奨する場面。ここには監督がこの作品に託した気持ちが入っているように思えま
した。この映画の中の家族のように、無理せず、ほどよく、適度に生きようじゃあり
ませんか、「適当に頑張る」いえ、無理に頑張らなくてもいいんじゃない?ほどほど
「適当に」って感じで、、。
そんな映画の雰囲気にピッタリな矢野顕子の主題歌です。
心が疲れた時に聞くと、明るい曲調なのに不思議と私の涙腺に響くのです。
映画のテーマとは真逆の高畑勲監督のチャレンジングな作品でした。
気楽に、穏やかに、適当に、、。
といったところで、また次回ですよ~!