陽出る処の書紀

忘れないこの気持ち、綴りたいあの感動──そんな想いをかたちに。葉を見て森を見ないひとの思想録。

隣にいる人で自分の人生が決まってしまうのか

2024-04-21 | 政治・経済・産業・社会・法務

今季から大リーグのドジャーズに移籍して活躍する大谷翔平選手。その彼の通訳兼サポート役の水原一平氏をめぐる疑惑で、連日大賑わい。少し前までは吉本の大物芸人のスキャンダルで持ち切りだったのに。

水原氏はギャンブル好きで違法賭博に手を出し、負けが混んでいた。そして、あろうことか、大谷選手の口座をのっとって違法送金してしまったという。その額何と24億円。

この一件ではさまざまなことが切り口になるだろう。
英語の教科書の題材にさえなっていた希代のメジャーリーガーと名通訳のうるわしい友情はもろくも崩れてしまった。女房役のように極端に尽くす男の裏にあったのは、飽くことなきお金への執着だった。美談で語られているが、本心ではどんな感情を抱いていたのだろう。

大谷選手といえば、つい先日、発表された奥様も話題をさらった。
とうしょは正体が秘されていたので、マスコミは暴くのに必死だった。羽生結弦選手の結婚生活の破綻もあるので、あまり報道が過熱気味になるのは喜ばしいことではない。

大谷選手の飼い犬がウェブ上の人気者になり、藤井聡太名人の勝負飯が連日話題になったりする。
たまたま同じものを所有したり、飲食したりしたひとがなんとなく誇らしげになる。不思議な現象ではある。行きつけのお店は聖地になり巡礼者がひっきりなしにもなる。

自分の母校に、生活圏に、スターがいる。
それだけで、自分がなにがしか満たされた気分になることもあるのだろう。ひどくなると、勝手に友人にされたり、知らない親戚が増えたりもするらしい。

今回の件でまだしも救いだったのは、大谷選手自身の潔白が証明されたことだろう。現時点ではホームラン記録も更新中で、メンタル上の影響も見られない。通訳の後釜になる人は多かったようだが、無事、後任者は決まったようである。

スポーツ界にせよ、芸能界にせよ。
なぜこの人が売れるのか、というなぞの裏には、ひとの巡りあわせがあるらしい。いい仕事を紹介してくれた、引き立ててくれた、救ってくれた、あるいは、その逆で努力を根こそぎされたり、理不尽な扱いをうけた。隣にいる人で自分の人生が決まってしまうのか。

憧れのあの人に近づきたいとか、覚え愛でたくありたい。
といった感情は誰にでもあるし、自分より美しく優れた人に倣いたいと思う人は成長意欲が高い人でもある。

けれども、ギャンブルに逃げる人というのは、往々にして、自分の身の丈以上の富を苦も無く手にしたいと考える人なのだ。
大谷選手の横にいて、その名声を間近にして、大谷選手の陰日なたで支えてきた水原氏は、自身も大谷選手のようなスターになりたくて、むしろ大谷選手と競い、追い越したいばかりに、巨額の賭けを行って資産を増やそうとしたのではないだろうか。

私も幾人かこのギャンブラー気質や投資好きと付き合ったことがあるが、身分不相応な大金を得たいと思う下地にこれまでの人生で鬱屈した挫折があり、メンタルを病んでいるのである。利用できないとわかると、おそろしいぐらいに手のひら返しをする。

しかし、こうしたギャンブル依存症などを生み出す背景にあるのは、昨今のやたらと大物スターやセレブの高級な暮らしぶりを紹介したり、その年収を大きく報道する風潮なのかもしれない。
私が子どもの頃でも、ベストセラーが名を連ねた高額納税者が新聞で発表されたり、プロ野球選手の年棒が公開されたりしていたが、極端に妬みや劣等感を刺激されなかったのは、まだ自分が稼ぐ年齢ではなかったからなのだろう。

自分の稼ぐお金=自分の能力という思考がしみついているから、同じ組織のなかで契約の違いで差別をしたり、家庭内でマウントがあったり、お金を生み出すことができなくなった弱者に対して辛辣だったりする世の中になる。

ちなみに、私は自分(もしくはその人の周囲)がいくら稼いだか、をアピールしだす人とは、なるべく距離を置くことにしている。隣にいたら精神的しんどいからだ。
お金の多寡いかんにかかわらず、こころ静かに、気持ちよく、自分が納得のいくものだけに支払いをして、過ごすことが幸せなのではないだろうか。


(2024.04.15)









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